トレンディな闖入者

残暑厳しい今日このごろ、皆様夏バテせずに頑張ってますか。。

 

ここ半年ほど、同じバス停で顔を合わす某芸人、によく似た風貌のおじさんがいる。

 

ここでは仮称「さいとうさん」と呼ぶことにする。

 

さいとうさんはバス停で会うたびに、いつも某芸人によく似てるなぁとしか思ってないくらいのおじさんだった。心の声で「さいとうさんだぞっ!」がリフレインしていた。

 

バスの中で私がカバンを置いてる横に、わざわざ彼のカバンを置いてくるのだ。さいとうさんは座ってるんだから、自分の膝に置きなさいよと思いながらも朝っぱらから面倒事に巻き込まれたくない私は黙っていた。

 

さいとうさんも僕のことをあまり快く思ってないのだろう。何となく険悪とまではいかないまでも、不穏な空気が二人の間に漂っていた。

 

後日、家を出て私がさいとうさんを見かけたとき、彼もまた私を認めて、やけに大股に歩き出したのだ。

いつもなら私は彼をそそくさと追い抜かしていくのだが、その日はさいとうさんもムキになっていたのだろう。

 

追い抜かれまいと必死に歩きに勤しんでいる。いや最早死ぬ気で歩いていて鼻息だけでなく、吐息もすごく、マスクをしているこちら側まで伝わってきた。

 

そして階段を駆け上がり、バス停まで100メートル足らず、そこでもさいとうさんと私は徒競走をやめずに競り合っていた。

傍から見たら、スーツを着たオッサン二人が競歩してるのだから、嫌に見苦しい。

 

残り30メートル、息も絶え絶えのさいとうさんが何とここからダッシュしたのだ。

 

私としてはおっさんが最後の力振り絞って走る、あのさいとうさん(激似)が走る光景を見て一気に興ざめしまった。

 

このおっさん、何をそこまで必死なんやろ。そしてかのさいとうさんはバス停に着くや否や、激しい息遣いのまま、小さな声で「よっしゃ!」と言い、笑顔を浮かべたのだった。

正直、激しく引いた。さいとうさんだけに。。

 

こんな令和3年の8月の終わりは嫌だ。。